H30年製図課題における「歩行者専用道路」
からの連チャンで書きます。
某さんからの質問には、今年話題の「延焼ライン」の質問も混ざってました。
というのも。
やはり、7月の課題発表の時に、前予告あったにせよ、製図課題としては初出題だったので。
1. 製図課題、初登場の「延焼のおそれのある部分」
前予告としては、(注3)としてこんな感じでした。- 建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置及び防火設備等の適切な計画
- 防火区画(面積区画、竪穴区画)等の適切な計画
- 避難施設(直通階段の設置・直通階段に至る歩行距離、歩行経路及び重複区間の長さ、敷地内の避難上必要な通路)等の適切な計画
いいね、と思いましたです。
なぜって。
私も、確認申請書類で、散々アレコレ調べ上げて、法規チェックして、図面の整合性も相当チェックして。
イザ提出!ってなった、審査後からの指摘に飛び込んできた文字。。。
「3階から上、南側の延焼ライン上の開口部に設ける窓は、防火設備にしてください」ぐへー
やっちゃったー!
完全に死亡、です。
そう。
2階までは、なんだか必死こいてマル防の字を書いたんですが。
3階から上の防火設備について、なぜかスッポリ丸々抜けまして。
平面図にマル防を書くのを忘れたくらいならまだしも!
建具表にも「防火設備」とすら。。。
完全にアカンやつ。。。
建物内に危険物関係があったので(非常用発電機を屋内設置&オイルタンクを屋内貯蔵)・・・
完全にそこに気を取られてまして・・・(イイワケ
こんなあほあほミスするんですわ・・・
我ながらほんまオソロシイ・・・
もちろん、平面図には延焼ラインの線も書き入れーの。
他の一級建築士の方のピアチェックも入ってるーの。
はずなんですが。。。
チェックした全員が全員、延焼ライン上の防火設備が抜ける!というシマツ。(以下略
ワタクシ的には、一発ノックアウトっす。
心臓氷りました。。。
申請でご指摘頂いて、ほんと反省しました。
さあ、前置き長いっすね。
話を製図課題に戻しましょう。
2. 話題の「防火上有効な」
試験終わったあと、あっちこっちで、というよりtwitterで、この「歩行者専用道路」からの延焼ラインはどうなるんじゃ!?っていうのが話題になっていたので。製図課題としては初出題なのもあって、いろいろ憶測が飛びましたね。
ウラ指導的に言えば、こうゆう初出題の問題では、「合否に差がでない」と言われてまして。
まぁ、確認申請出したことあって、内容わかってる方なら、特に問題なく描けるとして。
実務で申請出したことない方もワンサカ受験しているので。
オロオロされたことでしょう。。。
H30年の標準解答例の一番最初についてるA4ペーパーは、これまでと違う表現になってましたね。
読まれましたか?
なお、設計条件のうち今回の試験において不十分な回答が多かった「延焼のおそれのある部分」「防火区画」等の一つの考え方をこの標準解答例に示していますので参考として下さい。この書き方からして、受験生さんが提出した回答図面が、だーいぶアレたんでしょうね。笑
試験元としても、オイオイ、みんな確認申請出す時どうしとんねん?って思ったに違いない。
きっと、私みたいな、延焼ライン上の防火設備のことについて、スッポリ抜ける人もワンサカいるんでしょう。。。
審査する方、くだらないことにお手間とらせて、ほんとごめんなさいです。。。
(深く、深くお詫び致します
しかも、標準解答例の右下に補足されている言葉たるや。
※この欄は、設計条件のうち「延焼のおそれのある部分」等の一つの考え方を示したものであり、今後の学習の参考としてください。
だそうで。
もはや、私にとってもダメ出しに違いなく。。。
ぎゃー!です。二度と忘れまい。。。爆
3. 標準解答例は、製図課題に対する国交省としての見解
なお、東側の道路(12m)の中心線からの延焼ラインは敷地に及ばず、また、南側の歩行者専用道路(道路法)の反対側が公園であることから、当該敷地に延焼ラインは及ばない。だそうです。
これ以上もなく、以下もなく。
延焼ラインは、道路の中心線から発生する。ここまではよかった。
みなさんが、判断に迷ったポイントは以下かな?と。
- 南側の歩行者専用道路は、延焼ラインを考える上での「道路」なのか?
- さらに、道路の反対側に公園があった場合のただし書き緩和については、どう判断するのか?
→H30年製図課題における「歩行者専用道路」
問題は、2です。
twitterの反応を見てますとですね。
資格学校では「防火上有効な」と課題文に書いてないと、2の緩和適用と判断してはいけないと教わった、というついーとが流れてましたね。
そのついーと読んで、思いました。
デタ、今年もそうゆうことがあったのね。
オソロシイですね。
製図試験では、こうゆうことが起きるんです。
その結果として、先の標準解答例のA4ペーパーにある「不十分な回答が多かった」ということなんでしょう。
資格学校の先生の言うこと=先生又は資格学校の見解、であって、試験元である国土交通省の見解ではない。
すなわち、ゆらぎとして認知していないと、判断を間違える。
では、なぜ資格学校が『「防災上有効な」という文字がなかったら、緩和適用してはいけない』というような、まどろっこしい指導をするのか?この背景がわかってないと、判断を間違うわけです。
結論としては、先に引用したように。
H30年の製図課題においては、「防災上有効な」という前提条件がなくても、延焼ラインは発生しない、ということが、国土交通省の見解でした。
さらに言うと、来年もそうとは限らない。
んですが、ひとまず、H30年の課題として、お話進めましょう。
4. 延焼ラインを考える上での「防災上有効な公園」とは
建築基準法第2条第6号
ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面又は耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除く。
まず、建築基準法の前提条件としてですが。
条文として、明文化されてませんが、少なくとも敷地外である道路=避難上安全な場所及び消火上支障のない場所もしくは敷地外の道路に出たら避難完了、という設定です。
建物として、ニンゲンの安全を守る上で必要なのは敷地内の対策であって、道路は「建築」の範囲含まれませんから。
道路上の安全は道路法で担保されているので、建築基準法の管轄外=もちろん試験範囲外です。
同じ国土交通省の道路管轄目線から言えば、道路上の安全確保については(たぶん)常識なことです。
私も、道路法と道路構造令をそこまで読み込んでるわけではないのですが、以前いた都市計画事務所の社長が技術士の都市計画部門と道路部門の2つを持ってる方(!)だったので。
ザ、耳学問。
(こうゆうのを思考停止と言う。)
ま、ともかく『道路』は、建築基準法上では管轄外ですが安全ということで。
沿道建物については、地震で道路側に倒れてこないように、優先して耐震化されています、という前提です。
じゃ、H30年製図課題で出題のように「防災上安全である道路」のさらに反対側にある「公園」は?
単なる「公園」と言うのと、建築基準法上の「防災上有効な公園」の違いは?
はい。
ここが、延焼ラインを考える時に、見解の違いがでる、もしくは、見解の違いが出たところです。
私としては、延焼ラインを考える時に、資格学校があえて『「防災上有効な」の文字がないと緩和できない』と伏線をはったのは、よくわかります。
なぜか?
自治体により、「防災上有効な」の扱いが違いうから。すごいわかる。
早速脱線しますが、私も線路敷きに接している敷地で建物を設計したことがあります。
で。
「隣地が線路敷きに接している場合」の延焼ラインの考え方について、自治体条例に規定がありまして。
敷地の、線路敷きに接する長さが、一定の条件を満たせば、隣地からの延焼ラインが発生しない、という敷地でした。
こちらの本にも、線路敷きに接する敷地の緩和の件には触れられてます。
本、会社に置いてきたー!
冬休みー!
そうなんです。
法2条第6号のただし書きにあるように。
公園にしろ、広場にしろ、川にしろ。
空地もしくは水面に面していれば、オッケー!
とはならんのですわ。
その公園なり、広場なり、川に注釈がつくんですわ。
「防災上有効かどうか」の。
しかも、それが自治体によってマチマチなんですわ。
だーかーら、
資格学校が安全側を見て「防災上有効の文字がないと緩和出来んのや!とおぼえといてー!」て言うわけですわ。
えぇ。
ふーん、で読み飛ばしていいと思います。
でもね、
このような、延焼ラインについてのちょっとした知識や、調べようとする努力があると、こいつぁ、資格学校は安全側に見とるなっていうことも、わかるわけですわ。
いや、全国津々浦々、自治体条例くまなく探せって話じゃないです。
そら、「防災上安全な」という文字が課題文にあればいいっす。
ナンの問題もないっす。
迷わず、延焼ライン描かなくてよいです。
でも、H30年製図課題の課題文には「防災上安全な」という文字はなかった。
センセーからは、その文字がないならば、延焼ラインは発生すると教わった。
じゃ、試験当日自分はこの敷地設定、どう判断すんねん?てことです。
ま、実際そう教わって素直に南側の「歩道」延焼ラインを描いたとて、「H30年の製図試験においては」合否に関係なかったんでしょう。
「不十分な回答が多かった」そうなので。笑
受験生全員が判断に迷う内容では、学科でも製図でも、勝負がつかないのです。
ここまで直接的に、試験元である国土交通省からメッセージがあるのも、ちょっとオモシロイなーと思います。
来年、たとえば川に接する敷地が出て、「防災上安全な」とか課題文に書いてあるかどうか、ちょっと見ものです(コラ
5. まとめ
情報を、自分のものとして取り入れて、発する時は、その根拠を大事にしましょう。
それだけです。
フタを開けたら、「イエス」だった、「ノー」だった。
製図試験には、こういったことがゴマンとあります。
でも、調べられうる範囲で、この製図試験でどんなことが起きてるか。
自分でも、調べようじゃないですか。
ネット上に全部情報はあるのですから。
製図試験では、当日ダレも「答え」は教えてくれない。
自分ではこうだ!という決意を持って、6時間半で図面化し、記述化しないとです。
「○○さんがこう言ってたから、こうしました。」
・・・?
それって、製図試験ではどうなの?
その判断根拠、どこに置いてますか?
H30年に関していえば、たまたま「延焼ライン」の話でした。
防火区画やら、敷地内通路に関しても同じ。
もっと言えば、過去に出題のあった内容については、全部同じ。
過去問をきちんと学ぶって、そうゆうことかなと。
mitaroです。
返信削除本年もよろしくお願いします。
一級建築士製図試験は次なるステージへ突入!
といったところでしょうか
従来、「アプローチ」「ゾーニング」「動線」といった
建築計画の知識を問うことが主流だと教えられましたが、
平成30年は、それらに加え「実務的な知識の確認」も
出題者側の視野に入った?と思ってしまいました。
何れにせよ、ハードルは確実にあがっています。
あまりハードルを上げ過ぎると受験者数の激減が心配されますが、
聞いたところによれば、建築士の受験資格が緩和されるとのこと
若手受験者の確保が狙いのようですが、受験時における実務経験を緩め
試験合格から免許申請までの実務経験に重きを置いたようですね
早ければ、2020年の試験から適用されるようです。
それらのことも含め、今後も出題傾向の変貌が考えられますよね ^^
mitaroさん、コメントありがとうございます!
削除こちらこそ、本年もよろしくお願い致します!
そうですねぇ、私も、受験資格についての新しい制度?については、詳細追いかけてないのでナントモ言い難いのですが。
耐震偽造、杭の試験値偽造、免震ゴムの試験値?偽造など、社会的な信用度も落ちているので、その辺も含めて、きちんとした知識を持った人に一級建築士になってほしいというメッセージがあるように思います。(全然違ったりして。笑)
ともあれ、これから資格取得をとがんばる方を応援する側にいるものとして、できるだけ試験から読み取れる意図のようなものをブログにできるといいなぁと思っています。