2018-06-24

国宝茶室如庵へ その2ー大小5つの窓と躙口

先月行ってきた、国宝茶室如庵見学のづきです。

いやはや。

訪ねた日のお天気が完璧でした。
お庭の新緑と、見事な五月晴れ。

あとから、あとから、じわじわ来てます。
また、新緑の季節に書院の縁側でぼーっとしに行きたい。。。
以下、好き勝手思う存分書いていて、だらだらと長文なので、お暇な方どうぞ。


1 如庵、の前にやっぱり知っとくべき、千利休の待庵

さて。
平成27年の本試験、計画での出題ではこんなでした。
以下、合格物語から引用です。
27023
如庵(犬山市)は、17世紀にもと建仁寺内に造立された、大小五つの窓躙口の配置が特徴的な茶室である。
その1の方で、えーこんな出し方かーと思ったと書きましたが。
なぜかは、後述します。

ひとまず、先に、こちらの記事を。
茶室の窓 第1回 妙喜庵待庵

たまたま目にしたのですが、窓研究所の三井嶺氏の記事です。
すごいなぁ、東大で茶室の研究となると、それこそ堀口捨己先生の後を継ぐ形なんでしょうか、それとも内田祥二先生の・・・?

ともかく。
如庵を建てた織田有楽斎も、この待庵を建設当初から知っていて、きっと現地を訪ねていることでしょうから。
影響を受けていないわけがなく。
待庵にはじまる茶室の窓は、土壁を塗り残してつくられる下地窓によって、柱/梁から自由になった。
茶室の窓 第1回 妙喜庵待庵

この記事をよんで、はぁはぁ、なるほど、如庵の窓は待庵の進化版なんだなと。
現在、六本木ヒルズの森美術館で、原寸大の待庵が再現されているので、早く見に行きたいっす。


2 如庵見学前の予習

さて。
大学院の授業で、恩師が教科書にしたのが、この本。

茶室研究の大御所、中村昌生先生のご著書です。
中村先生、GWの普請文化普及フォーラム的な講演会の開会式で、ご挨拶されてました。
レジェンドすぎーーーッ!

この本、ひたすら、茶人とその建物について書かれているのですが、これがまた知らないニホンゴだらけ・・・
お茶を嗜まないワタクシメは、日本語なのに読めない!!!だらけで、授業中死にそうでした。
はい。

とりあえず参考文献として、行く前に最低限読んでおかねばと。
利休と有楽のところだけは、必死で読みましたとも。
読むと思い出しましたとも。
読めないニホンゴにフリガナを振り続けた日々を。笑

ちなみに、見学会の最中は室内での撮影禁止と言われまして・・・
私が撮った写真は、すべて外観のみです。


3 如庵の平面図

以下、引用部分・図は、全て「茶匠と建築」からです。
(↓の図の書き込みは、ワタクシです)

如庵は一見、入り母屋造り風な柿葺(こけらぶき)屋根の妻を正面にして、気品のあるたたずまいを示し、左端に袖壁を設け土間庇(どまびさし)を付け加えて、躙口(にじりぐち)を正面にあらわさない構えが、普通の茶室とは異なった外観を与えている。
 略
この茶室は、江戸時代から「有楽囲」とか「筋違いの数寄屋」などと呼ばれて、その特異な構成は広く世に知られていた。全体でほぼ四畳半の平面の中に台目床(だいめどこ)をつくり、台目の点前座(てまえざ)に炉を向切(むこうぎり)にし、しかも炉先に中柱を立てて板をはめ、火灯形に刳り抜いて道具座への明かりを取り入れている。床脇(とこわき)には、三角の地板を入れて壁面を斜行させ、茶道口(=勝手口)から客席へ通る亭主の動作を円滑ならしめている。 

まだ続くんですが、全引用はあれですので。

どうです?
かっこ書きのふりがななしで、茶道用語、読めそうでしょうか?
まぁ、まず、お茶文化に親しみがなければ知らないコトバだらけのはずで、行ったこともなければとても読みづらいのではと思います。
私も、この記事を書いていてだいぶカンが戻ってきましたが、またすぐ忘れそうです。ははは
以下、図面見ながらどうぞ。


4 如庵の躙口(にじりぐち)

「有楽囲」「筋違いの数寄屋」
先の引用にあるように、江戸時代からこの茶室はすでに特異だったんですね。

なにせ、たった3年しか、本人は暮らしてないですからね。
評判を広めたのは、後世の茶人たち、でしょうか。
この茶室に、3年の間にどんな方が招かれたのか。。。

躙口(にじりぐち)はですね、茶室の入り口。

一般的な躙口とは、お庭を通って露地を通って訪ねて来たら、露地正面、建物正面にあります。
しかし、如庵は、躙口を正面に表わさない構え「(「茶匠と建築」中村昌生著)。

これが、27023の出題理由の一つですね。
他と比べて躙口の配置が特異であると。
調べてみて、なるほどーです。


私が見学に行った時は、水屋のある茶道口(勝手口)から案内して頂きましたので。。。
「露地を通って、左側の躙口からにじって入る」という、お茶室への正式な訪ね方をすることは叶いませんでした。
(たぶん、躙口を構成する敷居や鴨居の材の摩耗とか痛みとか、そういったことを避けるためかと思います。)


躙口から入ったら、また全然違って見えたことでしょう。
とても残念でした。。。
(今から思えば、勝手口からの動線をなぞるとは、お茶会の主人=お客様をもてなす側=有楽の目線で室内を見ることができた、とも言えます。)


茶室の正面左側は、土間庇(どまびさし:庇のついた土間)があり、奥に荷物置きの小間(刀掛けの代わり)があります。
この土間庇(どまびさし)の下はまだ屋外空間で、沓脱石(くつぬぎいし:靴ぬぎ)があるわけですが。
ということは、
露地からやってきて、土間庇の下で荷物を置いて、いったん呼吸を整えて躙口をくぐる形になります。
その土間庇の空間自体が、お庭や露地、茶室に対していわゆる「斜(はす)」の構成になってます。

しかし、なんでまた正面でなくて左側から躙るようにしたんでしょうね?

躙口からにじった時に正面に見えるのは有楽窓(うらくまど:その3にて後述)で、まず最初にその窓が目に飛び込んでくるはずです。
そして、最初に見えるであろう点前座(てまえざ:お茶をもてなす主人が座るところ=有楽斎が座る)辺りですが、「三角の斜めの壁」のおかげで空間に奥行きが出る、と案内の方がおっしゃってました。

たぶんですが、待庵では一番に目に入るはずの床の間(とこのま)が、訪問客の目に入るのは、室内に完全に入って畳に座ったあとであろうことが想像できます。

この、あえて正面からズラす、もったいぶり(?)。

この躙口の上にも、鴨居(かもい)をはさんで障子のついた窓があるのですが、
案内して頂いた方いわく、
点前座(主人側)に座って躙口の方を見たとき、土間庇の袖壁にある微妙につぶれた丸い下地窓と、躙口の上にある窓を通して入る西日がきれいだそうですよ。


5 大小5つの窓

27023の出題キーワード、「大小5つの窓」については、中村先生、言及がありません。笑
(もちろん有楽窓についてはあります。)

私自身は、この5つの窓に、ベタにですが非常に感動しました。
案内してくださった方も、この窓がとてもいいのです、とおっしゃってました。
(とても、如庵への愛あふれる方でした。笑)

点前座(てまえざ)に座って顔を上げると、窓の大小と、その位置の上下にリズムがあって、視界に庭の緑が入ってきて。
全身で自然を感じることができるというか。
明るくて、ものすごく落ち着く空間でした。


もし、仮に露地に対して正面に躙口があったとしたら?
待庵のように、正面に土間庇がくるので、この、点前座に座ったときの空間の広がりや窓の並び、5つの窓を通して庭の緑や明るさを感じる空間にはならなかったはず。

お茶のお点前をする人にとっては、とても安らぐ空間ではないかと思ったりもして。
訪問したお客様にしてみたら、正面に床の間、背中に窓があって、お茶に集中できる感じなんですけど、どちらかというと、庭の緑は感じることはできないです。

有楽斎の「好み」が反映された空間であれば、なおさらこのお茶室の主体は「主人」。。。?と思えてきて、おもしろいなぁと。
他の有名どころの茶室を訪ねてなくて、ほとんど知らないのでわかりませんが、そんな風に感じました。


それにしても、それにしても。
なんという自由。
こんなに自由に窓を切ることができるなんて。
先に引用した三井嶺氏の記事にもありますように、この大小5つの窓の自由さが茶室を特徴づけている、のですね。


改めて。
如庵にある大小5つの窓は、大きさも据え付けられた敷居と鴨居の高さも全部違う。
一品生産も、一品生産。
よりすぐりの材料使って、効率とか、大量生産って、なんのことですか?っていう具合で造られてます。

現代建築の教育を受けた私も、さすがにこの窓の自由さに・・・
え?
えぇ?
ひとつひとつ?
って、正直、何が起きているかわからないくらい衝撃。。。


あとで、ゆっくり考えるに。
自分の中の、これまで当然と思っていた効率的な考えとか、大量生産をヨシとする考えに気づいたわけですが。

こうゆう風に窓を作ろうと、思ったことすらない。
なにしろ経済的でない!から、ハナから思いつきもしない、の一言。
どうです、この「経済的」という考えに毒され具合。笑

ローマのパンテオンに行った時の、ここは一体屋外なのか?建物の中なのか?という衝撃と同じくらい、この日の衝撃は強かったです。


いやはや、すごーい。
有楽好み」って、こうゆうことなのかーと。

おかげで、狭いはずの二畳半台目(にじょうはんだいめ)の室内も、かなり明るくて広く感じました。
さらには、折り上げ天井に天窓がついているので、開けるとさらに日が差し込むくらい明るいです。

待庵は、ほの暗くとても緊張感のある空間なので、その筋からは一線を画しているということがわかります。

お天気もよかったからもあると思うんですけど、あまりの居心地のよさに、しばらくその場を離れることができませんでした。
(団体客のキャンセルがあったとかで、行ったメンバーだけでかなーりゆっくりさせてもらいました。ありがたかったです。)

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