2013-04-26

東京駅と特例容積率適用地区

ひきつづき、都市計画制度の話。


東京は、まぁ、某省オヒザモトというかなんというか、事例には事欠かないわけですが。
H23年に出題で、たまたま参加できたH25年度2回目の過去問選手権でも出題のあった問題。
=ペンギンさん、ありさん含めて、コレは良問ダネ~と思ったであろう問題(と読み解く)。

余談はともかく、東京駅。

23034
東京駅丸の内駅舎(東京都千代田区)は,辰野金吾が設計した赤レンガのファサードをもつ駅舎であり,総合設計制度を適用して未利用容積を別の敷地に売却して事業費を捻出し,戦災により焼失した部分の復元を行っている.

答え ×
ペンギンさんのブログでも、これだけ東京駅ネタ。
http://blog.livedoor.jp/ura410/archives/53004106.html 
  ↓
最後の解答が○になってますが、×です~

http://blog.livedoor.jp/ura410/archives/53004050.html

http://blog.livedoor.jp/ura410/archives/53004124.html



で。
「総合設計制度」はよく出てたけど、こういった形での出題は初めて、ということで。
話題になりました。

えーと。
どっから行きましょうね。

先の問題の答えは、東京駅は、総合設計制度を適用して復元したのではなく、特例容積率制度を適用して復原した、です。


もっと言うと、東京駅復元以外に特例容積率制度が適用された地区は、H25年現在全国でひとつもありません。
=東京駅復原のためだけの、都市計画法改正、でございます。はい。

すごいですね、この影響力というか、なんというか・・・


はい。
千代田区の都市計画図。
大手町・丸の内・有楽町周辺を勝手に加工して貼り付け、です。ごめんなさい。

気が向いたら、拡大してみてください。


んん???
凡例に、特例容積率適用地区とは書いてないジャン?
あれれ?
と思ったアナタ、正解です。



詳細は、こちらのサイト。
http://tochi.mlit.go.jp/chiiki/land/ex20/1703/index.html

三菱一号館を建替えた時の、事業スキームが書かれたサイトです。
サイトから、勝手に画像引用したら怒られるかな・・・
こ、ごめんなさい。
そもそもの容積率が1300%
 ↓
都市再生特別地区として、全体として「+230%」の割り増し。
 ↓
その「+230%」のうち、「+130%」は特例容積率制度による割り増し分。
だそうです。



ほれほれ。
地域とか地区の名前がいっぱい出てきて、混乱してませんかね?

都市計画法、第8条。
こんな感じです。
地域地区
第八条  都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。

一 ~二の二  略
二の三  特例容積率適用地区 ←これ
二の四~四  略
四の二  都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区 ←これ
都市計画法、もういっちょ引用。
第九条
15  特例容積率適用地区は、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域又は工業地域内の適正な配置及び規模の公共施設を備えた土地の区域において、建築基準法第52条第1項 から第9項 までの規定による建築物の容積率の限度からみて未利用となつている建築物の容積の活用を促進して土地の高度利用を図るため定める地区とする。
だそうです。
ついでに、建築基準法では、第57条の2~に規定ですが、引用はしませぬ。


一応、都市計画法の中では、特例容積率適用地区と都市再生特別地区は、別々に規定されてますね。
しかも、第9条によると、第1・2種中高層住専、第1・2種住居、準住居、近商、商業、準工業・工業の各地域で定められると。

まぁ、普通に考えて、工業専用地域は、読んで字のごとくほとんど工場用地みたいなものですから、土地の高度利用?都市化?って感じで、適用から外れるのもなんとなく納得。



ということで。
東京駅周辺は、先の千代田区の都市計画図を見ても、いろんな都市計画の手法が折り重なってるという感じでしょうか。

かつて、皇居を上から見下ろしてはならない&皇居に向けて窓を作らない、という皇居周辺地域の独特の感覚と、美観地区(現景観地区や屋外広告条例等)や美観論争、100尺(約31m)の高さ制限があったのが懐かしいくらいですね。

現在は、高さ200m程度までオケーということだそうですが、大手町・丸の内・有楽町地区の地区計画、リンクしておきます。
まぁ、建築業界からすると、地区計画は割りと身近ではないかと思うので、あまり解説はしません。



ということで、都市計画法の一字一句を覚える必要は全くないですけど・・・
まとめ。

東京駅って、こうやって法律を変えて事業費を稼いで復原したのねー
特例容積率制度ってそうゆうことねー

くらいな感じで、イメージで覚えて頂ければ。

さっくり言って、「公開空地を作ったら容積率緩和」という総合設計制度とは、全く違うことがお分かりいただけると嬉しいですー
(これは建築基準法第59条の2に規定の制度&ありふれた制度なので解説しませぬー)

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オマケ
設計&設計監理を担当したJR東日本建築設計事務所による、東京駅丸の内駅舎保存復原についてのコラムです。
都市計画的手法についてはあまり触れられておりませんが、建築士としてついでに知っとけ!情報は、免震レトロフィットの内容、くらいですかねー


オマケ2 追記 2017/03/11
私も、ほんと都市計画の仕事をする立場にいながら、知らないことばかりでお恥ずかしい・・・

この東京駅復元を実現するために、東大の建築史家のお二人、鈴木博之先生と藤森照信先生が奔走されたんですね。
鈴木先生のご著書を少しずつ読み始めて、自分の無知さに呆然・・・

歴史的建造物vs経済活動。
その、ひとつの解答がここにあると。
東京駅皇居側の一丁ロンドンと呼ばれた洋館の集まる地域を、いかに保存しながら、都市としての経済活動を担保していくか。
千代田区、JR東日本、三菱地所、そして建築史家(専門家)の組み合わせが、成功したと。

東京駅の容積率を売り飛ばした、と表記していたことを、恥ずかしく、ここにお詫び申し上げます。

6 件のコメント:

  1. はい、理解できました。
    法規でモチベーションを
    下げない為に、日々
    つづけるにっきの
    『こもごも』見ながら
    楽しんでます。
    (ニヤニヤ??)

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    1. kayaさん
      あはは!

      みちゃいましたか。
      お恥ずかしい。
      がんばって、モチベーションを下げないように工夫してくださいね!

      このブログも、もうしばらくはしつこくつづきますよ。笑

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  2. あーこれ。
    容積率を周りのビルに売った話は知ってたのですが、
    なんて制度だったっけ?と頭を悩まし、
    他の選択肢と迷い、間違えた問題でした、笑
    考えてみたら、総合設計制度じゃないんですけどね~。
    これも総合設計制度なの?と思考回路が働いてしまう
    4択問題の摩訶不思議です。

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    1. smileさん、リアルな体験談ありがとうございます!

      法規は一問の文章量が多いし、焦りもあると、読み飛ばしますよね・・・(-_-)
      もう出たら間違えないだろうけど・・・
      当時は、泡食ったと思います。

      不安がなくなることはないですが、少しでも自信のある状態で受験したいですよね。
      引き続き、がんばってください!

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    2. ちなみに(余計なお世話ですが)
      計画の問題なんですよー。
      他の選択肢が全然分からなくって、容積売ったから、これは×じゃないなーと、他を選んだら、コレだったと言う、笑
      毎度、ツメの甘さが残念な感じです。

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    3. おおお、smileさん、そうでした。
      思わず法規と書いてしまいました。ほほほ

      このとこ、ほんと間違いばっかし(-_-)

      いやー
      でも、これ、相当感度がよくないと、解答できないと思うんですよね。
      まぁ、出題者も、
      どうだーーー
      東京駅ーーーー
      みんな知ってる建物で出題だよーーーー
      わかってるかーーーい!?
      って感じで問題出してると思うので・・・(苦笑)

      必ず見破れる(?)というか答え見つけられるようになるので、
      諦めずにがんばってくださいね!
      応援してます!

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